債務承認(債務の承認)
「債務の承認」とは、その言葉のとおり、相手への債務を承認することをいいます。
諸般の事情で、契約書(金銭消費貸借契約)を作成していなかった場合や、現金渡して領収書をもらっていない場合、さらに時効期間を経過してしまった場合などもあります。そのような時は返済を踏み倒されても、残念ながら証拠がないので訴訟で勝つ見込みが低くなってしまいます。そこで、相手が返済する気持ちがあるうちに債務承認をしてもらうことが有効です。
「債務の承認」とは、その言葉のとおり、相手への債務を承認することをいいます。
書面としては債務承認弁済契約書を作成します。債務承認弁済契約書とは、債務者が、債権者に対して弁済しなければならない債務があることを認める旨と、その債務の弁済方法等を定めた契約書です。
債務承認弁済契約書 債務承認弁済契約書とは、債務者が、債権者に対して弁済しなければならない債務があることを認める旨と、その債務の弁済方法等を定めた契約書です。 金銭貸借の場合ですと、既存の金銭貸借契約の返済方法を改めて定める場合や、元々借用書(金銭貸借契約書)を作っていなかった場合などに用います。
裁判外交渉(弁護士を通じた交渉)
弁護士同士による交渉になった場合は、相手側の主張の納得感や証拠の証拠能力等を客観的に検討し、双方が裁判になった場合の主張が認められる見込み(勝訴可能性・裁判上の和解になった場合の和解金額の着地見込み)をお互いに推測します。
そこで相手方弁護士が当方の主張の正当性を納得すれば、相手方弁護士が裁判にまで持ち込む(裁判で敗訴する)よりも早期に和解した方が良いという判断になることもあるので、相手方弁護士が相手方(会社)を早期和解に向けて説得することで解決に近づくこともあるのです。
支払督促(しはらいとくそく)
支払督促(しはらいとくそく)とは、債務者が債務の返済をしてくれない場合に、裁判所に申立てることで、支払督促を発してもらう手続です。この時、債務者が支払督促を受け取ってから2週間以内に異議の申立てをしなければ、裁判所は、債権者の申立てにより、支払督促に仮執行宣言を付さなければならず、債権者はこれに基づいて強制執行の申立てをすることができます。
支払督促のメリット
裁判所が簡単な書類審査だけで、相手の意見を聞くこともなしに、相手に対して支払命令を出してくれます。
収入印紙も、普通の裁判の約半分で良いことになっています。
また郵送で提出することもできますので手続きも簡便です。
さらに相手が異議を申し立てしなければ、そのまま強制執行を行うこともできるのが支払督促のメリットです。
以上のメリットから、沢山の未払い顧客を抱える、信販会社・消費者金融会社などが積極的に支払督促を利用しています。
支払督促のデメリット
相手方が簡単に「異議がある」と回答するだけで、支払督促は無効になってしまい、普通の裁判に移行してしまいます。「異議がある」と回答する際に、理由や根拠も不要なのです。
追加の印紙代も支払わないといけません。
裁判に移行してしまうと、そこから改めて裁判が開かれるので、最初から普通の裁判を起こした場合よりも時間が長くなってしまいます。
このようなデメリットがあるので、普通の債権回収の場合は、支払督促を選択すべき場合は、結構限られています。
仮差押え
裁判を起こす前に、相手が相手の財産の使用・処分(売却や譲渡など)できないようにすることができる制度です。
つまり、裁判が終わった後で、相手方から確実にお金を回収するために、判決より前に、相手方の財産を仮に差し押さえる手続です。例えば、相手方に土地や建物、預金などの価値がある財産があったとしても、裁判(1年くらいかかります)の間に、土地や建物が誰かに売られてしまったり、預金が引き出されて使われてしまっては、仮に訴訟で勝っても、相手方からお金を回収することができなくなるおそれがあります。そのため、あらかじめ、相手方のそれらの財産について、売ったり、使われたり、隠したりできないようにするため、財産を仮に差し押さえるという手続です。
仮差押えの事実上の効果
相手にとっては、自分の財産が自由に使えなくなるので非常に大きなプレッシャーになります。
銀行預金であれば仮差押えされると信用問題になります(銀行から貸金返して欲しいと言われる可能性もあります)し、クレジットカードであれば、顧客がカード決済できなくなってしまいます。
このように相手の弱みをつく手段なので、自分の財産を仮差押えされてしまえば、訴訟を提起する前に、それまで支払請求を無視していた相手も交渉に応じざるを得なくなることもあります。
仮差押えの要件
仮差押えをするには、裁判官による厳格な審査で認められる必要があります。被保全権利(債権)の存在や、保全の必要性(仮差押をする必要性)など、法的根拠に基づき申立の正当性をしっかりと主張しなければなりません。
また、一定額の担保金を裁判所に納めることも必要です。担保金は債権の種類等に応じて裁判官が決定しますが、債権額の10〜40%くらいです。これは万一裁判で敗訴した場合、相手方に対して、仮差押えされたことについて損害賠償責任を負うことがあるので、そのための担保金です。
公正証書
公正証書とは、当事者に頼まれて第三者である公証人が作成した文書のことを言います。公文書として扱われるため、法的紛争の際に文書が真正であると強い推定が働きます。つまり相手方が、「そんな契約書知らない・偽造である」などという主張が事実上非常に困難になります。
さらに強制執行認諾条項を入れておけば、裁判を起こさなくとも、すぐに差押えなどの強制執行が可能です。強制執行認諾条項とは、「債務者が債務を履行しない時は、直ちに強制執行を受けても異義のない事を承諾する」という旨の文言です。これは債務者に対して大きなプレッシャーになるので、債務を確実に履行していただくための有効な手段ともなります。したがって、通常の契約書でも、相手方が返済してくれない可能性が高そうな場合には、公正証書としておくことも行われています。
このようなメリットがあるので、公正証書は、離婚の時の養育費支払いなどの取り決めや、遺言書などで良く使われています。養育費の場合、不払いがあるとすぐに相手方の給料差押(全額ではありませんが)ができるようになります。また遺言書は、内容によっては(例 兄弟の一人に全財産を遺す)、「遺言書は真意でない。」「認知症が進んでいた時期である」という主張を受けて争いのなりやすいのですが、公正証書で作成しておけば、裁判で無効とされる可能性が非常に低くなるのです。
公正証書の作成場所
全国の公証人役場で作成してもらえます。公証人には元裁判官や検事などの法曹関係者も多いようです。
少額訴訟
訴訟のうち、60万円以下の金銭の支払を求める訴えについて、原則として1回の審理で紛争解決を図る、簡易裁判所における特別の訴訟手続です(民事訴訟法第368条第1項)。1998年から導入された比較的新しい制度で、通常の裁判に持ち込むことが難しい少額案件について、簡易迅速に紛争を処理することを目的として設けられた制度です。
少額訴訟の仕組み
請求金額が60万円以下に限定されるほか、原則一回の裁判で終了するので1ヶ月程度で解決しますから、早く事件を解決したい場合にも向いています。したがって、事件が複雑でなく、証拠も揃っていることが望ましいのです。
また、双方が弁護士を立てないで行うことも多いので、少額な請求で弁護士に頼むと、「費用倒れ」になりそうな場合に適しています。
そこで、少額の貸金や、敷金返還請求(家主が敷金を返還しないという主張)などでよく利用されています。
もっとも、相手が少額訴訟の結果に納得しない場合は、通常訴訟に移行してしまします。その場合には費用も時間もかかってしまいますのがデメリットです。
民事調停
民事調停は、当事者同士の合意によって紛争の解決を図ることを目的とする簡単な手続きによる、非公開の制度です。 民事調停は、あくまでも当事者同士が話し合い、お互いが譲り合って解決することを目的としていますので、必ずしも法律にしばられず、実情に合った円満な解決を図ることができます。
民事調停のメリット
まず、トラブルを穏便に解決できることがメリットです。裁判だと相手方を正面から非難することになるので人間関係が壊れてしまいがちですが、調停の場合には、調停委員が間に入って穏便な話合いの方法で手続きが進んでいきます。そこで、親族関係や賃貸借関係など、将来も関係が継続する可能性が高い相手方の場合は適しています。
一方で調停の結果(「調停調書」と言います)には裁判の判決と同じく強制力がありますので、相手方が調停の結果の通りの支払いをしない場合には資産の差押えをすることも可能です。
民事調停のデメリット
調停には強制力がないので、欠席されてしまうことがある上に、平日に都合を合わせて調停に行かなくてはなリません。裁判の場合は、大部分の手続きは弁護士のみが出廷すれば良いのですが、調停では自分自身が行くことになります。
また、強制力がないので、長期間話し合いをしても、結局合意できず解決できないことも多いのです。そのような場合、調停は不成立となって終わってしまうだけなので、民事調停にかけた費用も労力もすべて無駄になってしまいます。
強制執行(判決や公正証書あるとき)
判決や公正証書を得たのに相手方が支払わない場合は、強制執行をすることができます。
強制執行とは、判決などの債務名義によって確定された私人の請求権を、当事者の申立てに基づいて国家が強制力をもって実現する手続です。相手方の財産を差し押えてお金に換え(換価 競売など)、債権者に分配する(配当)などしてくれるので、債権者は債権を回収できます。
差押えのできる相手方の財産として、債権(売掛金債権、貸付債権、預金債権、給与債権)や不動産や動産(貴金属や骨董品など価値のあるもの)があります。
給料の差押えの場合、原則として相手方の給料の4分の1(月給で44万円を超える場合には、33万円を除いた金額)までのみ差し押さえることができます。もっとも、養育費の回収などを目的とした給与の差押えに関しては、給与の内の2分の1までの差押えが可能です。
差押えするには、差押える財産を特定することが必要なので、例えば銀行預金であれば、どの銀行に預金があるのかまでは特定する必要があります。