普通解雇の意味、要件、手続、退職金との関係

普通解雇に際しては、慎重かつ丁寧な対応が必要となります。是非早めの相談をお勧めします。

 

普通解雇の意味

普通解雇とは、能力不足や病気による就労不能など、従業員が労務の提供が行えなくなった場面で行われる解雇です。これに対して懲戒解雇は、従業員の「企業規律違反に対する制裁」として行われる解雇をいいますので普通解雇とは異なります。一般に懲戒解雇の方が処分としては重くなりますし、従業員の不利益(転職の際の不利益など)も大きくなります。

もっとも、懲戒解雇事由に該当するとしながら、処分としてはより軽い普通解雇とすることも認められています。企業からすると「懲戒解雇にすることもできたが、恩情をかけて(情状酌量して)普通解雇にした」との言い分になります。この場合でも、そもそも懲戒解雇事由に該当しなければ、その普通解雇も不当解雇になります。

 

普通解雇の要件

就業規則には解雇事由を定める必要があります(労働基準法89条3号)。多くの就業規則には、解雇事由が列挙される中に「勤務成績が著しく不良」「〜の障害により業務に耐えられないと認められたとき」などと書かれています。また、解雇事由の記載漏れがないよう、列挙される解雇事由の最後に「その他各号に準ずるやむを得ない事情があったとき」などと概括的・一般的条項が定めてあることも多いのです。

 

ただし、「勤務成績が著しく不良」とは、単に「期待に達していない」「同僚より劣っている」という程度では足りません。会社は、余程のことがない限り従業員を解雇することができません。特定の能力の不足を理由とする場合では、それが重大な能力不足で配置転換も困難であり、教育や指導を尽くしても改善の見込みがない場合という事情がある場合のみ解雇できます。会社が解雇できるハードルは相当に高いのです。

 

普通解雇と解雇予告手当

企業が従業員を解雇する場合、30日前に「解雇予告」するか、30日分の「解雇予告手当」を支払うことが義務付けられています(労働基準法第20条)。つまり、いきなり「今日から解雇なので明日から来なくてよい。給料は本日までしか払わない」ということはできず。申し渡してから30日後に解雇するか、即日解雇する場合には30日分の解雇手当を払う必要があります。

 

普通解雇と退職金

普通解雇の場合は、通常、就業規則等の退職金規定通りの退職金が支払われます。

一方懲戒解雇の場合は、退職金を支払わない(または減額)ことを退職金規程に定めている会社も多くあります。そこで、「懲戒解雇にすることもできたが、恩情をかけて(情状酌量して)普通解雇にした」という場合退職金の支払いが問題になることもあります。

この場合でも、判例や主要な学説は、退職金不支給が許されるのは、従業員の過去の労働に対する評価を全て抹消させてしまう程度の、著しい不信行為があった場合に限られると解しています。そこで、会社に損害を与えた程度や、企業秩序を乱した程度などの個別具体的な事情を考慮して退職金不支給の適否を検討することとなります。

 

以上のように、普通解雇に際しては、慎重かつ丁寧な対応が必要となります。是非早めの相談をお勧めします。

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